農園紀行 Single estate
 
 

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ここに世界的なカップの品評会として知られるCup of ExcellenceR Competitionのニカラグア2014ロットの結果が記載されている。全24入賞ロットの中である特定のFarmerのファミリーネームが複数確認できるだろうか。  24品中、実に9品にPERALTA(ペラルタ)の名前が記されている。このペラルタファミリーの農園を統括するがPERALTA Coffee(ペラルタ・コーヒー)だ。似通った風土条件の中でなぜペラルタ・コーヒーが生み出すカップが飛び抜けた結果をもたらす事になったのか?そこにはペラルタ・コーヒーのきめ細やかなマネジメントが隠されていた。

PERALTA Coffee(ペラルタ・コーヒー)の代表であり、ペラルタファミリー内の一農園主でもある彼に会う事が今回のニカラグア訪問における主目的である。我々が現在取扱いをしているEL Limon(エル・リモン)農園も彼の農園だ。
ニカラグア最古の農園の一つであるエル・リモン農園はドイツ系移民より開拓されたが内乱時に一時放棄され、その後の管理もごく一般的にコーヒーを栽培していたのみだったが、その後、多額の設備投資を行い革新的な品質管理と効率化を確立し、生産性・品質共に飛躍的に上昇した。
 
地元では名士として知られるフリオ氏
 
品種は85%以上が中米ではポピュラーなカツーラ種、少量のカチモール種、そして我々が日本で独占入手しているティピカ(Java)1%で年間の全生産量は8000袋(69kg/袋)前後。ニカラグアの平均生産率1ha当たり約9袋に対してこの農園の生産量33袋(約3.6倍)という凄まじい数字からもペラルタコーヒーのマネジメント力がいかに高いかが読み取れる。

では具体的にペラルタ・コーヒーのマネジメント例をあげてみよう。
 
エル・リモン農園。レモンを意味する名前を持つ農園が生み出すカップのフルーツフレーバーは一級品
 
 

●グリーン・マネジメントの推進



各農園の最上部に設置されている溜め池
 
コロンビアの山岳産地共通ではあるが、シエラ・ネバダの産地も総じて急斜面を利用した栽培が基本である。
生育条件でのメリットも多い斜面栽培だがメンテナンス面でのデメリットも大きい。
しかしそれ以上に結果として得られるカップ品質を考えると、やはりこの方式がBESTなのであろう。
 
 
また熱帯雨林保護をミッションとしたレインフォレストアライアンスの認証も全農園で取得、原生林の中にクロタラリア(豆科)、バナナを主としたシェイドツリーを園内にくまなく配置し環境負荷の極端に低いグリーンマネジメントを行っている。

補足ではあるが、土地の持つテロワールのポテンシャルがもともと高い事に加えて、ジャングルとも思える程の植樹の下で結果、コーヒーを栽培する事になり、カップの品質がさらに高まったと考えられる。
 
急勾配に沿って広がる園内を回るのは一苦労。一度敷地内を踏破したフリオ氏もその後3日間、筋肉痛に悩まされたらしい
 
 

●マイクロ・ロット&ナノ・ロットへの細分化



 


通常コーヒーは農園で収穫された後、時期やおおまかな場所の単位で区切られ精製処理を行う。
しかしこの方法では管理コストは安くなるものの、キャラクターや品種、標高の違いなど環境の違いによって生まれる"味わいの差"が解りにくくなる問題が生じる。
特に上質のスペシャルティコーヒーがその中に含まれている場合はなおの事だ。

 

これを解決するのが「マイクロ・ロット」の考え方で、従来の大規模な精製ではなく丁寧に精製できる小さい設備でコーヒー豆を少量生産することで環境の違いから生まれる繊細な味わいをカップに残せる事ができる。生産者にもマイクロ・ロットの付加価値付けにより収入増のメリットがあり、世界のスペシャルティ産地ではマイクロ・ロットへの移行が加速している。 生産者にもマイクロ・ロットの付加価値付けにより収入増のメリットがあり、世界のスペシャルティ産地ではマイクロ・ロットへの移行が加速している。

 
5精製前の薄皮を纏った豆が天日の下で黄色いダイヤモンドの様に光っていた
 
最近ではさらに細分化した全生産量50kg程度のスーパー・マイクロ・ロットやナノ・ロットといった物も登場している様だ。
ペラルタ・コーヒーでもマイクロ・ロット専用の小規模ミルやアフリカンベッド(風を利用する乾燥棚)やグリーンハウス内での天日乾燥を実施、共に日に6回撹拌乾燥を人力で実施し乾燥ムラを排除している。
グリーンハウスでは日射量30%をカットするカバーを使用して上段から下段に撹拌・移動し、精製別にゆっくりと時間を掛けて乾燥を行なうことにより、品質向上と品質維持を計っている。これら細やかに管理された各ロットは麓のペラルタ・コーヒーのドライミルでの最終行程を経て、敷地内にまで乗り入れたコンテナに直接積載されまでシスティマティックに管理されている。
 

● 味をデザインする


カップの品質、キャラクターは栽培や品種の条件だけで決まるものではない。 精製処理によっても味は大きく左右される。 精製で低グレードのカップがハイグレード品になる事はないが、素晴しい風味をもった商品が台無しになったり、新しい魅力を纏ったりする事もある非常に重要な行程だ。つまりこの行程を完全にコントロール出来る様になれば精製で「味をデザイン」する事も可能な訳だ。

 




カッピング後のディスカッションにも力が入る
 
 

 

中米では、コーヒーチェリーを剥いたあと豆の周辺に残るガム状の粘着性分(ミューシレ―ジ)をミエルと呼
ぶ。 蜂蜜のこともミエルと呼ぶのでミューシレ―ジの別称はハニー。ハニー成分はきれいに除去しないとコーヒーにダメージを残してしまう反面、うまく残せば素晴しい風味を纏わせる非常にデリケートで厄介な存在だ。 このミューシレ―ジを残したコーヒーをハニーコーヒーと呼ぶ。

 
この非常にリスキーで魅力的なハニーコーヒーに前述のペラルタ・コーヒーがトライしない訳もなく、現在着々と様々なサンプルを作り精度を上げている。 現地でカップした中にも印象的なものが多く更なる品質向上を期待したい。
 


6棚干しも干しっぱなしという訳ではない。攪拌の手間を惜しむと台無しになる

 

イエローハニー……通常のハニーコーヒー。またはパルプドナチュラル。

レッドハニー……収穫後の果肉除去前に24時間日陰にて広げて保管。その後、果肉除去を行い通常のハニープロセスを行なう。

ダークハニー……赤ワインに似たボルドー色と呼ばれる濃紅色になるまで木上で成熟させたチェリーを使用し通常のハニープロセスを行なう。
(レッド、ダークハニーに関してはチェリーの糖度で分類するコスタリカ方式とは若干違う様だ)

 
 
 

 今回の視察ではペラルタ・コーヒーのカップにかける情熱と味をデザイン&実現するための徹底された細やかな管理体制、そして何より各農園の従業員との良好な関係性が実際に感じられた。あらためて現地でのご対応に謝辞を述べるとともにパートナーとして更なる飛躍を期待したい。


ヒロコーヒー
焙煎責任者 山本光弘
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