HOME > 世界のカフェレポート > カフェハウスという舞台 〜ウィーンカフェ・リポート
現在、最もスペシャルティコーヒーが進んでいる地域はどこだろう? 先日訪れたアメリカ西海岸もその一つに間違いないがEUの近年の進化を見逃す訳には出来ない。 そのEUで2012年6月ヨーロッパスペシャルティコーヒー協会の年次大会が行われた。 場所はコーヒーハウスの発祥の地とされるオーストリア・ウィーン。 前述から、ウィーンでもスペシャルティコーヒーの最先端が垣間見れるかと推察されるだろうが、 最初SCAEの大会がウィーンで行われると聞いた時、私の中では疑問符のほうが大きかった。 なぜか? いきなり言葉を覆す様になってしまうがスペシャルティコーヒーの大きなウェーブが起きているのは あくまでEU内の北欧というのが業界内の常識で事実、前年に視察した北欧でのコーヒービジネスに 私自身大きな刺激を受けていたばかりだったからだ。
若干の疑問を抱きながら訪れたウィーンのコーヒービジネスはどの様なものだったか? 結論を言ってしまうと「私自身の全くの認識違い」だった。
正直、数軒回ったカフェではコーヒーの味だけに限ると特筆すべきものはなかったが、全体の佇まいや雰囲気など、 トータルで「カフェ」(ウィーン風に言うならKaffeehaus/カフェハウス)を評価すると、やはりウィーンはすごい。 旧市街全体が世界遺産に指定されているウィーンだが、そこに「伝統的カフェハウスに流れる空気感」なる項目を 加えてもいいのではないだろうか?
こういったカフェハウスを、さらに魅力的にしているのが、その歴史。特に19世紀末に活躍した芸術家達にまつわるエピソードに心惹かれる人は後を絶たない。
ここCafe Hausbrandtは、建築家JosefHoffmannが常連だったことで有名でもちろんにもちろんカフェの入居しているビルもJosefHoffmann設計。
アレンジコーヒーだけで少なくとも10種類。 アインシュペンナー(ウイーンナー・コーヒー)や コアントロー入りのマリアテレジアなどが定番だ。
さて、ウィーンでは「カフェ」といっても、いくつかタイプがある。 高い天井にシャンデリア、鏡を効果的に配し、窓際にはソファー。クラシックな雰囲気のカフェは、ウィーンでは特に「カフェハウス」と呼ばれる。ハウスとつくのは、自宅にいるのと同じ感覚でくつろぎ、ゆったりと時を過ごすための空間であることに、並々ならぬ思い入れがあるからだろうか。 これとは対照的に、煙草の煙がよく似合うデカダンな雰囲気。そんなバーに近い存在のカフェもある。芸術家が集う、というよりたむろする、という表現がぴったりでこれもウィーンカフェの典型。 そしてもう一つ、カフェ・コンディトライと呼ばれるスイーツ店のカフェ。 ウィーンではほとんどのスイーツ店がカフェを併設していて、ゆっくり楽しむことが出来る。 ザッハトルテで有名なザッハホテルのカフェもこの系統だ。
余談だが(ここウィーン開催という事でもないだろうが)ご多分に漏れずトレンドというのは現金なものでSCAEの大会で開かれたWBC(ワールドバリスタチャンピオンシップ)の会場に併設された各国のバリスタが提供するエスプレッソブースで提供されていた物がほとんどこのイタリアンスタイル。 サードウエイブ・スタイルとは全く逆のベクトルをいくエスプレッソを各国のトップバリスタ達が選択したという事実はそこに集まっていた関係者によって自国に持ち帰られ、あまり遠くない未来に大きく世界のエスプレッソのトレンドが変化するはずだ。いや、むしろ原点回帰と言うべきか。
当然人気には理由がある。1つは店内のインテリアがとてもカフェとは思えず、どこかのサロンなのではないか?というくらいの装飾で出来ていること。 もう1つの理由は提供しているケーキ類の種類がウィーンに比べて圧倒的に多いのだ。