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近年、彼等の2世、3世が目ざましい活躍をみせコーヒー産業はもとより、ブラジル国内で大きな力を持ち彼等日本移民団の評価も見直され日本とブラジルをむすんだ功労者として再評価されていると聞きます。
そんな世界一のコーヒー生産国ブラジルを訪問する事は日本人として、そしてコーヒーを生業とする者として長年の私の夢でした。
店頭ではそのブラジルでの視察の模様をビデオでご紹介していますがご覧になれない方の為にここでは文章でご紹介しましょう。
しかし近年この流れが変わり従来のブラジルコーヒーとは違う全く新しい高品質コーヒー豆が現れました。
ブラジル・ミナス・ジェライス州セラード高原で栽培されるセラードコーヒーです。
セラードでもコーヒー豆の品質は各農場によってまちまちになります。 コーヒー豆として出荷する場合、各農場の生産工程に差があると品質に大きな影響が出て地域のイメージにも大きなマイナスになります。 それを補うために、セラードでは一帯で農場を営む17名45農場が結束してカセール(セラードコーヒー生産者協議会)を設立し品質の維持・向上、安定供給を図っています。 ここではコーヒーでは初めて生産地品質保証書の発行も行うという快挙も成し遂げました。 前述の通りセラード高原はコーヒー豆の栽培に非常に適した場所であることは言うまでもありません。 しかし、その恵みをさらに美味しくしている要因はこの地で行われている近代的な精製法にあります。 その歴史はまだ浅く、20年ほど前から始まったばかりですが、高い収穫高・高品質を保ち、国内外の農園から注目を浴びているカセールの管理工程をご紹介しましょう。
●生育 理想的な生育環境にあるセラードですがやはり天候によっては人の手が入ります。 主な所では灌漑設備の使用がありますが比較的低いところにあるカセールの加盟農場では(それでも標高900m) 視察時には2ヶ月雨がないという事で巨大なシャワー車で農園全体に雨を降らせていました。(右写真) 平坦な土地が多い特徴を最大限に生かした大型機械の積極的な導入はカセールの得意とするところです。 この他、木の根本にホースを這わせて水を与える点滴灌漑法は導入コストとの兼ね合いがありますが、蒸発分を考えずに効果的な灌漑が出来ると取り入れる生産者も多いとの事でした。
●デスムシラドール(滑り除去機) 果肉除去された豆の表面には果肉成分である滑り(ムシラージ)が付着しています。この滑りを取らないと発酵してしまうので、この段階で少量の水を使い機械的に除去します。 そして洗浄されたパーチメントになり、乾燥場に送られます。 未熟豆は2級品として、国内用として使用されます。
●脱穀・選別 このままずっと保管していても意味がありません。 この次の工程として脱穀を行います。(右上写真) この時点でのコーヒーはパーチメント(内果皮)に覆われていて、これを脱穀するとコーヒー豆(生豆)が現れます。私達が飲んでいるコーヒーはこの状態の豆を焙煎して飲んでるのです。 最後に精選された豆の欠点豆や異物を除去する作業が選別です。 例えば、振動による比重選別やカラー選別などが行われます。(右下写真)
その後セラードの農場で生まれ育ったコーヒー生豆は、見知らぬ国や土地で人の手に委ねられる訳ですが出荷後もその管理は続きます。
彼等は豆の生育と品質に関する情報を随時追跡できるセラードT.O.Cプログラム(CERRAD TRACEABLE ORIGIN COFFEE PROGRAM)と呼ばれる独自のシステムを持っています。 これは世界的に食の安全が考えられる中、様々な管理・認証機関が求めるトレーサビリティ(履歴追跡)の考え方に準じたもので現在までの研究成果を積み重ね、独自の高級品質生豆を継続的に供給する体制の確立と、購入者が生豆誕生の由来などに理解を深められるよう考えられた証です。 品質に徹底的に自信とこだわりを持つカセールならではの活動といえるでしょう。
こうして最高の品種、最高の管理、そして最高の焙煎技術が備わったコーヒーは関わった全ての人間の思いがこもった最高のコーヒーとなります。
今回はるか地球の裏側で同じコーヒーに情熱を傾ける人たちと触れ合う機会をもてたのは自身にとって大きな収穫でした。 今後もヒロコーヒーは積極的に現地の生産現場に目を向けてよりよい商品をご紹介していきたいと考えています。
ヒロコーヒー 焙煎責任者 山本光弘