株式会社ヒロコーヒー採用情報

株式会社ヒロコーヒー外食アワード2015受賞

農園紀行 Single estate
コーヒー農園と聞いて皆さんはどのようなイメージを持たれるだろう?
さんさんと照りつける太陽? どこまでも広がる大地?
もちろん、これらもコーヒー農園のひとつの姿ではあるが全てではない。
元来、コーヒー豆というのは熱帯雨林で他の木の日陰で栽培されるものだったが60年代以降 生産性を重視するあまり、こういった熱帯雨林を伐採して裸地で栽培するケースが多く見られる様になった。

しかし近年、地球環境を巡る様々な問題が世界中で取りざたされる中、コーヒーも例外なく環境配慮型の生産スタイルにシフトしていこうという流れが生まれてきた。
その考え方の一つがシェイドグロウン(日陰栽培)コーヒーだ。
シェイドグロウンは直射日光に対して耐性の低いコーヒーを単体で生育させるのではなく、その周囲に様々な木を植え日陰を作る栽培方法で、結果この木々が生物達にとって 自然生育の場として機能し貴重な生態系を保護する農法として注目されている。
今回、そのシェイドグロウンに早くから注目し良質のコーヒーを生産しているコロンビアのある農園を視察する事が出来た。
 

「四つの認証を誇る理想の農園」

コロンビア サンタンデール州 サンギル地区にあるEl Roble農園(通称メサデ(ロス)サントス農園)。
メサデ(ロス)サントスとは現地語で「聖なる机」。 切り立った峡谷の中に台地状に広がる特殊なこの地区の形状を表している。
事実、私達が訪問した際も、雲を突き抜ける様に車で一気に1000m以上を上ると目の前に突然、荘厳な森が広がった。
雲上の世界、メサデ(ロス)サントス農園があるのはそんな場所だ。

 

60歳を超えているとは思えない程元気なオズワルド氏
  農園主はオズワルド アセベド氏。
この農園を含め3社を経営する実業家であり、現大統領アルバロ・ウリベとも懇意にするなどコロンビアでは著名な人物で、多忙を極めるとの事ではあるが、我々の訪問を快く受け入れ、案内役を引き受けて頂いた。
ここはオズワルド氏の曽祖父(Diaz氏)により1873年創設され、300ha(甲子園球場 約75個分)の敷地内でカツーラ種600,000本、ブルボン種300,000本、ティピカ種200,000本が栽培されている
 
現在この農園がシェイドグロウンに伴い第三者機関から受けている認証はJAS(日本の有機認証)、USDA(アメリカの有機認証)、バードフレンドリーR、レインフォレスト・アライアンスの4つ。
認証マーク
もちろん単体でも取得、維持に神経を使うという認証を単一農園でこれだけ取得してる例は希有だ。
日本を発つ前、なぜこの様な事が可能なのか私には上手くイメージする事が出来なかったが、農園内をオズワルド氏に案内される内、その疑問は徐々に氷解していった。
 

1.シェイドグロウンの取り組み
この地域は年間降雨量950mmと圧倒的に少雨地帯でありそもそもコーヒーを生育するには絶対数が不足していた。
その為圃場が乾燥してしまうのを防ぐためシェードツリーを植える方法が旧来より行われており、その栽培方法とサステイナブルコーヒーとしてのシェイドグロウンの考え方が多方面に情報網を持つオズワルド氏と早くからつながり他農園に先じて複数認証を得る結果につながっている。
ただし在来農法をただ行っているだけでは進歩はない。
その方法は非常にシスティマチックなものだった。

 

日光に弱い幼木を守る様に配置された木々
 
@苗床から定植する際にはコーヒーだけを植えず、その周囲に成長速度と高さの違う木が同時に植えられる。   A苗の一番そばの木は早く成長し太陽の直射をカバーする。同時に実を落とす事で土壌にリンやチッ素を施肥して3年から5年で枯れる。
 
 
Bその後、バナナ等の比較的成長の早い中木がより大きな日陰を作りその実は生産者の食料や周囲の生物達に還元される。   C最終的にインガ、オーク等の高木が周囲全体を覆いシェイドグロウンは完成となる。ここでは全50品種の樹木が植えられている。( 158本/ha, コーヒーの木4,000本/ha)
 
 
2鳥達の楽園    
  ここコロンビアは北米からの渡り鳥が休息する非常に重要な地域だ。
この渡り鳥の保護を主眼においたバードフレンドリーR認証の主な要件としてあげられるのが有機栽培である事とシェイドツリーの植栽でその内容は非常に詳細に規定されている。

(シェイドは10種以上、3層の高さに枝葉が広がるように植える、鳥達の休息地となる枝振りがある、餌となる実が出来る、完全オーガニック、等)
カセールでは「人の手」を超えた高性能収穫機(完熟実だけを摘み取ることができる)の使用を推進していました。
ここでもそれは非常に厳密に実施され園内には農園なのに全くコーヒーの木が植えられず、代わりにえさ場や巣箱が設置され、多くの草花が咲き誇る「バード・パラダイス」(オズワルド談)なるものまであった。
 
3オーガニックの取り組み    
オーガニック栽培を行う上で最も神経を使うのが害中対策だ。
コーヒーの実を食い荒らす天敵「ブロッカ」。この害虫対策として、案内されたのはなぜかハーブ畑。
虫の付いた実とこのハーブをブレンドして菌糸類を発生させて原液を作り、それをスプレーするという非常にオーガニックな手法を披露してくれた。
 

ブロッカに食われた豆は
商品価値を失ってしまう
 
その他の害虫駆除について尋ねるとオズワルド氏はおもむろに近くの草むらに入り込み、クモの巣を指し示した。
「一番の対策はこれだ。自然のものを相手にするのだから自然に任せるのが一番だろう。」
要はブロッカ以外の虫を退治しようという考え方はあまりないらしく園内では日本で見る蚊柱の何倍もあるものが至る所で見られたが、それさえもオズワルド氏は「オーガニックの証明だ(笑)」と誇らしげだったのが非常に印象的だった。
またこの地方は養鶏が盛んで昔から肥料を化学肥料に頼らず、鶏糞を肥料に用いてきたのも有機認証をスムーズに取得する上で大きかったという。
 

エコでオーガニックな捕虫器
 
4品種の研究    
園内にはミュージアムと呼ばれる広大な研究試験場があり様々な品種が栽培され、この土地にあった品種や栽培方法が研究されていた。
80年以降、コロンビアは高地栽培のメリットに甘んじて安易な栽培に走り、交配種が幅を利かせて本来の在来種を駆逐していった時期があり、「コロンビアの味は変わった。」とファンが離れる一因を作っていた。

今でもそのイメージが若干残ってはいたが、ミュージアムでのオズワルド氏の探究心とこだわりを目の当たりにして随分印象は変わった。
要は「どこで」「何(品種)を育てるか」も大事だが、一番大事なのは「誰が」である。
 
 
  私がこうやって現地に行くのは現地の状況を確認する為だが、一番重視するのは生産者だ。
コーヒーには、生産者のひととなりが見事に表れる。愛情込めて育てられたコーヒーの木は実ひと粒づつが違ってくる。
だからこそ、本当にそのコーヒーに惚れ込み、消費者の皆さんに自信を持って勧める為には(たとえ片道20時間の拷問イスが待っていようと)
生産者の顔を見るのに地球の裏側にまで飛んでいくのだ。
やはり農園巡りはやめられない。


オズワルド曰く「オーガニックの証明」である蚊にやられたのか、手が大きく腫れて「ドラ●もん」の様になってしまった。
事あるごとに人に尋ねられるのでその都度「オーガニックの代償」ですと答える様にしている。
ヒロコーヒー
焙煎責任者 山本光弘